日本医真菌学会雑誌
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測定キット間の血中(1→3)-β-D-グルカン測定値不一致の原因に関する検討
吉田 耕一郎二木 芳人見手倉 久治中島 正光川根 博司松島 敏春
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2001 年 42 巻 4 号 p. 237-242

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抄録

血中(1→3)-β-D-グルカン(β-グルカン)は現在,主としてアルカリ処理-発色合成基質カイネティック測定法(比色法)と希釈加熱-比濁時間分析法(比濁法)の2法により測定可能でそれぞれ一定の評価を得ている.しかし最近,両法の測定結果に不一致を認める検体が確認され,その解釈が問題となる場合も少なくない.私達はこの不一致の原因を考察する目的で,1999年1月から5月の間に深在性真菌症が疑われたため,若しくは深在性真菌症発症の高リスクであることからモニタリング的に川崎医大附属病院中央検査部でβ-グルカンが測定された患者,全146例の保存血清343検体を対象として血中β-グルカン値を両法で測定し,各々の測定結果を真菌感染症の確定群,疑診群,否定群で検討した.さらに同検体中のβ-グルカン活性をカルボキシメチル化カードラン(CM-カードラン)を用いて抑制し,不一致の原因を探った.両法によるβ-グルカン測定値は緩やかな相関を示したが,比色法は比濁法よりも高い測定値を示す傾向にあり,深在性真菌症否定群においても陽性検体が多い結果であった.また比濁法ではCM-カードランを添加することにより,すべての検体で測定限界以下となったのに対し,比色法ではCM-カードラン添加後も,測定値が陽性を示す検体が多い結果が得られた.このような検体では比色法でβ-グルカン以外の非特異反応を検出している可能性がある.両法の測定結果に不一致を認める原因は,この非特異反応の検出にあると考えられた.今後さらに多数例で検討し,両法の特性を明らかにする必要がある.

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