日本医真菌学会雑誌
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某スポーツ系大学運動部学生におけるTrichophyton tonsurans感染症の調査
廣瀬 伸良白木 祐美比留間 政太郎小川 秀興
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2005 年 46 巻 2 号 p. 119-123

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抄録

Trichophyton tonsurans感染症は,日本において格闘競技選手を中心に急増している.この感染症の拡大を阻止するためには,格闘競技選手をとりまく他競技選手の感染拡大状況を調べることが極めて重要である.
対象と方法:某スポーツ系大学運動部学生497名を対象として,調査用紙とhairbrush法による頭髪の白癬菌保有の有無を調査した.
結果:(1)柔道部学生31名は,当初11名(35%),hairbrush法で本菌陽性であった.本群は1.5年間に9回にわたる集団検診と陽性者の抗真菌剤治療を行い,日常の感染予防指導を受けながら多くの試合や合同練習を継続していたが,全員がhairbrush法で陰性化し,体部白癬の発生は消失した.(2)他競技学生466名のうち138名は2003年度1回/週の柔道実技授業を受講しており,185名は同施設内での寮生活を行っている.他競技学生については白癬を疑わせる皮疹の発生を申告した者はなく,hairbrush法も全員陰性であった.今回の調査より,日本におけるTrichophyton tonsurans感染症の拡大の現状は,対人格闘技を運動特性とする競技種目が中心であり,本感染症について充分に啓蒙された集団では,トレーニングを継続しながらの治療で,感染拡大を阻止できることが示唆された.

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