日本鳥学会誌
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都幾川におけるセグロセキレイMotacilla grandisの 定住性と年生残率
内田 博永田 尚志
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2000 年 49 巻 1 号 p. 1-8

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抄録

1989年から1995年にかけて埼玉県の中央部を流れる都幾川河川敷で,セグロセキレイの標識個体群を追跡し,冬期の採食なわばりの位置を調査した.
1.個体群中で成鳥の占める割合は53~62%であり,新規加入個体はほとんど亜成鳥であった,
2.いったん調査地内に定着した個体は雌雄とも高い定住性を示し,連続した年間のなわばりの平均移動距離は78.1±17.9m(n=96)であった.雄でなわばりへの執着性が強い傾向がみられたが,繁殖分散距離に雌雄差および年齢差は認められなかった.
3.調査地内での最長生存個体は,雄6歳,雌7歳であり,野外での最長寿命は7年以上であった.
4.セグロセキレイの年生残率の推定値は,ラック法で0,58±0.02,ホールデン法で0.63±0.02であった.雄の年生残率がやや高い傾向があったが,統計上の有意差はなかった.
5.個体群中の成鳥の割合(53~62%)と生残率の95%信頼推定幅0.54~0.62は一致していて,都幾川のセグロセキレイの個体群は安定齢構成に近いと考えられた.

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