日本鳥学会誌
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高槻市におけるカラス2種の営巣環境の比較
中村 純夫
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2000 年 49 巻 1 号 p. 39-50

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抄録

生態的に重複する部分の多いハシボソガラスとハシブトガラスについて,1991年の繁殖期に大阪府高槻市で営巣環境を調査した.調査地は市街化区域,隣接する農耕地•里山からなる2km×2kmの13区画であった.ハシボソガラスは常緑樹に52%,落葉樹に25%,人工物に23%と営巣し,小さな緑地を繁殖に利用することが多かった.ハシブトガラスは常緑樹に92%,落葉樹に3%,人工物に5%と営巣し,大きな緑地に利用が偏っていた.林縁から巣までの距離はハシボソガラスの平均が20.3m,ハシブトガラスの平均が113.7mであった.樹種,巣高,緑地規模のいずれにおいても,ハシブトガラスはハシボソガラスに比べ高い隠蔽度の営巣環境を利用していた.巣の周辺150m以内での農耕地の占める割合は,ハシボソガラスではハシブトガラスより約10%多かった.緑地の占める割合はハシボソガラスでは小さい側に極端に偏っていたが,ハシブトガラスでは偏りが無かった.大多数のハシブトガラスが大きな緑地の常緑樹という組み合わせの営巣環境を利用した.一方,ハシボソガラスは小さな緑地の常緑樹という組み合わせだけでなく,大きな緑地や緑地のないところ,落葉樹や送電鉄塔まで含めた多様な組み合わせの営巣環境を利用した.営巣場所における両種のすみわけが生じたのは,採餌行動における種間差と低い隠蔽度への耐性における種間差が原因であると考えられる.

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