コロニーや集団ねぐらとしてカワウに利用された森林における森林生態系の変化について,これまで明かとなっている知見を紹介し,研究の意義および今後の課題を論じた.森林の植物や土壌は,糞の付着,羽ばたきや踏みつけによる枝葉の折り取り,巣材採集により影響を受けていると考えられた.植物や土壌が受けた影響により,森林内の植物-土壌間,植物-植物間の相互作用,さらには土壌動物や菌類などの生物の群集構造が変化していると推察された.それら生物間,生物-非生物間相互作用のバランスの変化は,森林の遷移様式を大きく変えていると推察された.今後,植物衰弱•枯死のメカニズムの解明,森林植生の長期変化のモニタリングと予測モデルの構築,森林 に生息する生物個体群動態と群集構造の変化の解明,コロニーや集団ねぐらで問題とされる個々の現象の検証に課題が残されていることを指摘した.以上のような基礎的研究が,カワウによる森林被害問題の解決に向けた方策の模索に重要な役割を果たすことを指摘した.