日本鳥学会誌
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ニワトリにおける卵生産過程とそのしくみ
今井 清
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2003 年 52 巻 1 号 p. 1-12

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抄録

ニワトリ Gallus gallus domesticus は産業上最も重要な家禽であり,その原種はセキショクヤケイ G. gallus とみられている.家禽とは卵または肉の供給源として人類が作りあげてきた鳥類であり,ニワトリをはじめウズラ,シチメンチョウ,アヒルなどが含まれる.ニワトリ,したがって鳥類における卵生産の過程は,卵巣における卵胞成長,最大卵胞の排卵,卵管内での卵形成および放卵から成り立つ.本論文は,まずニワトリの放卵にみられる規•bull;性について記述するとともに,卵生産に関する生理学,特に内分泌制御機構について概説した.卵胞の急速成長に要する期間は多くの卵胞で7日から10日の範囲内にあり,8日型のものが最も多い.卵胞に蓄積される卵黄物質は卵胞エストラジオールの刺激により肝臓で作られ,血流によって成長卵胞に運ばれる.最大卵胞(ヒエラルキー第1位卵胞)の排卵のために重要なホルモンは,下垂体から放出されるLHと卵胞で分泌されるプロジェステロンである.卵形成は,卵管内で卵白,卵殻膜,卵殻が卵黄の周りに順次形成される過程であり,これに果たす卵管各部位の役割やその時間的経過についてはよく知られている.放卵に関与するホルモンとして下垂体神経葉から放出されるバゾトシンと排卵後卵胞および最大卵胞で産生されるプロスタグランジンがあり,さらに卵胞ステロイド,特にプロジェステロンの卵管への感作も重要であると考えられる.以上を要約すれば,視床下部-下垂体-生殖腺ならびに生殖腺-肝臓を結ぶホルモン機能環が,ニワトリ(鳥類)における卵生産機能発現の根幹をなす制御機構であると結論される.

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