日本鳥学会誌
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ハシブトガラス Corvus macrorhynchos における集合音声と採餌群れの形成
相馬 雅代長谷川 寿一
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2003 年 52 巻 2 号 p. 97-106

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抄録

鳥類や哺乳類に関するいくつかの研究では,餌資源に集まる群れは,餌を発見した個体が同種他個体を引きつける集合音声を発することにより,形成されることが報告されている.ハシブトガラス Corvus macrorhynchos は群れで採餌を行うことがあり,そこでは「kakaka」という特徴的な音声が発声される.そこで,人工的に設置した餌場へのハシブトガラスの集合過程での「kakaka」声の頻度, その前後の群れサイズの変化の観察と「kakaka」声の再生実験を行うことにより,「kakaka」声が集合音声として機能しているのかどうかを調べた.観察の結果,「kakaka」声が発声されると群れサイズが上昇しており,この回数と採餌群れの大きさとの間には正の相関関係がみられた.また,「kakaka」声の再生は,何も再生しなかった統制実験を比べて多くの個体を引きつけた.これより,「kakaka」声は,餌資源への集合音声として機能していると考えられる.様々な理由から,動物は群れを形成することによって採餌上の利益を得ており,それが採餌効率の上昇につながる場合も多いことが,いくつかの研究において指摘されている.ハシブトガラスは,採餌群れを形成することによって,採餌効率を上昇させているのかどうか検討するため,そのついばみ速度と採餌群れの大きさを計測した.この結果,これらの2 変数の間には正の相関関係がみられた.これにより,ハシブトガラスは多数の個体が集まることで採餌効率を上昇させている可能性が示された.

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