日本鳥学会誌
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大阪におけるカラスの帰塒前集合の動態
中村 純夫
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2004 年 53 巻 2 号 p. 77-86

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抄録

カラスの帰塒前集合(日中の活動域よりねぐらへ向かう途中に形成される集合)を大阪府高槻市とその周辺で,1989年12月より1993年3月まで観察した.いずれの帰塒前集合でもハシボソガラス C. corone,とハシブトガラス C. macrorhynchos が参加していた.調査頻度は10日間に1-3回で,日入時刻の2時間30分前より30分後まで調査した.日入時刻の2時間前に集合地にいた個体数(先着数)と幼鳥の比率,日入時刻の2時間前から30分後までの間に通過していった個体の数と方向,集合地に吸収された個体の数と方向,集合地から出発した個体の数と方向を記録した.同時に照度と集合地での群飛を記録した.いずれの帰塒前集合でも,集合した個体の大多数は同一の塒方向に飛去し,先着数が多い日には吸収された個体の延べ数(吸収数)が多かったが,通過していった個体の延べ数(通過数)とは相関がなかった.帰塒前集合aとbは冬期に不連続的に形成され,集合個体の大多数は通年ねぐらLに向かって飛去した.aは河川敷きに形成された幼鳥主体の集合で,ここからのねぐらへの出発は早い時刻におこなわれた.bは春と秋にねぐらのあった山林に形成され,秋ねぐらの消滅直後や春ねぐらの成立直前に時々臨時ねぐらとして使われた.帰塒前集合cは初夏より夏にかけて春ねぐらMと初夏ねぐらNの中間点に連続的に形成された.春ねぐらの消滅までは全個体が春ねぐらに,消滅後は全個体が初夏ねぐらに向かって飛去し,出発グループサイズは春ねぐらの消滅前に急増し,消滅後に急減した.このように利用パターンは3つの帰塒前集合で異なっていた.

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