日本鳥学会誌
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ファイ係数であきらかになった20世紀後半の日本の鳥類群集の変化傾向
安田 雅俊川路 則友福井 晶子金井 裕
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2005 年 54 巻 2 号 p. 86-101

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抄録

在不在データにもとづいた群集の類似度指数のひとつであるファイ係数を用いて,日本の繁殖期の鳥類群集の時間的変化を検討した.20 年以上継続された調査の記録(北海道,岩手県,長野県,栃木県,東京都)をもとに,初期群集とその後の群集の間のファイ係数を計算し,χ2検定を行った.5調査地点のうち3地点(岩手県,栃木県,東京都)でファイ係数の減少傾向が認められた.東京都では1960年代後半に,岩手県と栃木県では1970 年代後半に,種構成について初期群集との間の有意な相関が消失した.種構成の時間的変化は,(1) 夏鳥と留鳥双方の種の消失,(2) 初期に観察されなかった鳥種の新たな出現の2つの要因によってもたらされた.ファイ係数は長期間の鳥類群集の変化を検出する有用な手法であり,また,統計的検定が可能であるため,在不在データにもとづくその他の類似度指数よりも優れていると結論された.本手法を用いて,過去の鳥類群集の長期的な変遷パターンを抽出し,その変化の要因を推定すること,また,群集を継続的にモニタリングすることで変化を早期発見し,早期対策が行われることが望まれる.

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