日本補綴歯科学会雑誌
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自由咀嚼と片側咀嚼の機能的差異の検討
本間 和代河野 正司本間 済櫻井 直樹
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2005 年 49 巻 3 号 p. 459-468

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抄録

目的: 片側咀嚼は, 初回嚥下までの咀嚼回数が多いうえ, 口腔前庭への粉砕食物の貯留率が高いとの報告がある. しかし, 咀嚼方法と咀嚼に関与する歯および口腔を構成する各要素とのかかわりは明確にされていない. そこで, 自由咀嚼や片側咀嚼といった咀嚼方法が咀嚼能力にいかなる影響を与えるか明らかにし, 自由咀嚼と片側咀嚼の機能的な差異について検討することを目的とした.
方法: 顎口腔系に異常を認めない正常有歯顎者116名を被検者とした. 両側を乗り換える自由咀嚼と片方のみでの片側咀嚼によるピーナッツの初回嚥下までの咀嚼回数を調べた. つぎに, 唾液分泌量, 咬合力, 臼歯接触点数を測定し, 平均値を基準とした大小2群の自由咀嚼と片側咀嚼の回数差を求めた. また, 被検者より32名を抽出し, 初回嚥下直前の粗粒子残留量を調べ, 唾液分泌量, 咬合力, 大臼歯接触点数の大小による残留量の比較を行った.
結果: 全被検者の初回嚥下までの咀嚼回数は, 自由咀嚼は片側咀嚼より10%少なかった. また, 唾液分泌量, 咬合力, 臼歯接触点数の大小2群のいずれも自由咀嚼の咀嚼回数が片側咀嚼より少なかった. 初回嚥下直前のピーナッツの粉砕度を粗粒子残留率として求めると, 咀嚼に関与する各要素において, 唾液分泌量および咬合力の各小群において有意差が認められた.
結論: 唾液分泌量, 咬合力, 臼歯接触点数の大小にかかわらず, 自由咀嚼は片側咀嚼に比較して, 咀嚼回数が少なく, 自由咀嚼の咀嚼能率が高いことが示された.

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