日本農村医学会雑誌
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低蛋白食実行者に見出された腎不全進行完全抑止例の特徴について
椎貝 達夫羽田 俊彦服部 光治岩本 均前田 益孝大和田 章加藤 邦彦
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1995 年 44 巻 1 号 p. 16-21

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抄録

慢性腎不全 (CRF) 進行抑制のための低蛋白食 (LPD) を中心とした総合治療「取手方式」が始められて7年が経過し, 受診した総症例数は486例に, 現在通院中の症例は219例に達している。
その中で治療開始以前は進行を示していたにもかかわらず, 治療開始以後12か月以上最長54か月にわたって血清クレアチニン値が変化せず, クレアチニン・クリアランス (Ccr) は前値の5%以内の変化に止まっている12例を見出した。全例LPD (0.69/kg/day目標) が良く実行されており, Ccrは16~32ml/min, 平均20.9±1.3 (SE) ml/minで, 原疾患は慢性糸球体腎炎 (CGN) 10例, 腎硬化症 (NSC) 2例である。LPDを実行しながら腎不全の進行を示した10例,(CGN9例, 腎硬化症1例) と比較すると, 進行停止群では0.4±0.2g/dayであったのに対し, 進行群では1.6±0.3g/dayと多く (P<0.001), また蛋白摂取量 (PI) を比較すると, 両群の平均値は0.62±0.02g/kg/day, 0.60±0.029/kg/dayと有意差はないが, 個々の例のPIの変動係数 (CV) を比較すると, 進行停止群では10.8±0.6%であるのに対し, 進行群では19.5±1.3と停止群で有意に減少していた (P<0.05)。この成績より, Ccrが16ml/min以上でUPEが少ないCRF例ではLPD (0.69/kg/day) を日毎のPIの変動を少なく実行できれば, CRF進行の完全停止が得られる可能性が示された。

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