全日本鍼灸学会雑誌
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米国鍼灸の教育制度
小田 博久
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キーワード: 教育制度, 大学基準協会
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2005 年 55 巻 5 号 p. 723-735

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抄録

アメリカ合衆国における一般義務教育制度は、小学校6年、中学校3年、高校3年となっていると信じている日本人が多いが、これは事実ではない。各種の変形方式が存在しており、連邦政府は子供が16才まで教育を受けることを義務づけている。伝統的な学校教育に代わるものも存在しており、それは「在宅学習」と称される。私立大学は、通常、州政府より認可され、その後、絶対必要条件でないが大学基準認定の過程を経る。認定された学校と大学が、学生ローンを提供し、学生ビザのための書類を発行することができる大学基準協会の認定は、事実上社会的に必要である。「大学基準協会の認定」の目的は、「自己評価過程」を実行し、組織の発展に関するための第三者からのアドバイスを受けることにある。合衆国における学校および大学の運営システムは、日本と同じではない。特に、公民により所有される非営利法人 (NPO) は理事会によって、公益のために管理されなければならない。この理由により、理事長は法的にCEOやCFOを兼ねることはできない。理事は公民から公正に選ばれなければならないので、鍼灸の学校の理事が、単に鍼灸師のみで構成されてはならない。さらに、性や人種差別があってはならない。学校や大学の使命と目的は、客観的かつ明確に、詳細に描写されているべきである。学生が他の学校に移る場合をも考慮して、講義細目 (syllabus) は客観的に記述されていなければならない。大学基準協会は、大学の発展を助長するために大学の短所を詳細に示唆する。自己評価および大学基準協会による認定過程の主要点は、運営方式、教育システム、大学の財政状態である。「大学基準協会による認定」は望ましいシステムではあるが、相当な労力と時間、財源を必要とする。同時に、各々の過程におけるフィードバック・システム、または組織における問題の捉え方は、極めて重要である。しかし、合衆国の教育制度が、必ずしも日本の学校組織より優れているとは言えない。学生が組織 (教員を含む) の評価を実行するシステムである「学生評価システム」に関して、「大学認定協会による認定」は、時には人気の要素によって影響を受け得る。

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