日本臨床細胞学会雑誌
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子宮頸部上皮内癌におけるCarboplatin腟内投与例における細胞病理学的検討
片岡 明生大田 喜孝岡 邦彦本村 聡河野 勝一薬師寺 道明
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1992 年 31 巻 6 号 p. 937-942

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抄録

Carboplatin (CBDCA) 膣内投与を3例の上皮内癌 (CIS) に行い, 細胞診, 摘出組織により形態変化の観察を行った. 症例1: CBDCA50mg投与6時間後の摘出組織像において, 核周囲の細胞質内に空胞形成が著明であった. 症例2: CBDCA: 250mg (25mgx10) 投与後, 上皮層の剥離による潰瘍形成が著しく, 細胞浸潤も目立つ. 細胞診は, CIS細胞の出現はなく, 核質染色性の判然としない膨化変性細胞が認められた. 症例3: CBDCA: 500mg (25mg×20) 投与の摘出組織でCISを含む異型上皮は, 脱落していたが一部に91andular involvementとしてのCIS上皮の残存を認めた. 細胞診は,(1) 約2倍程度の細胞の膨化 (2) 細胞質内の空胞の出現 (3) 核クロマチンの粗凝集 (4) 細胞質融解 (5) 核質の濃縮, 破砕 (6) CIS由来細胞の消失 (7) repair cellの出現が観察された. CDDP投与時の変化と類似しておりCDDPとCDDPアナログの共通の薬理作用による抗腫瘍効果と推察されるが, 初期の細胞胞体の変化は, 症例1の組織像にも観察されており特に重要と考えている. 組織像では潰瘍形成により細胞の脱落を認めた. コルポ診でUCF症例では, 頸管深部に十分なCBDCAが及ばなかった可能性が考えられた.副作用は, 全く認められなかった.

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