背景:肺のoncocytic carcinoidはまれでoncocyteに類似した腫瘍細胞が主体を占めるcarcinoid tumorの一亜型であり, その細胞所見の詳細な記述は少ない. 今回われわれはoncocytic carcinoidの1例を経験したので報告する.
症例:62歳, 男性. 検診胸部異常陰影指摘. 胸部CTにて右B10cが関与する境界明瞭な結節を認め, 経気管支穿刺吸引細胞診にて腫瘍性病変を疑い, 経気管支肺生検においてcarcinoid tumorの診断, 右肺下葉切除された. 腫瘍捺印細胞所見からはoncocytic carcinoidを推定し, 組織学的検索, 電子顕微鏡的検索により, typical carcinoidの亜型であるoncocytic carcinoidと診断された.
結論:経気管支穿刺吸引細胞診において好酸性細胞主体の像がみられた場合, oncocytic carcinoidも念頭に置く必要があると思われたが, 細胞所見のみでoncocytic carcinoidと断定することは不可能であり, 確定診断には組織学的所見, 免疫組織・細胞化学的所見, 電子顕微鏡的所見を総合的に判断する必要がある.