日本臨床細胞学会雑誌
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乳腺過誤腫の1例
小田 夫中沢 有希立矢 裕子二木 敏彦有賀 美紀子河村 常作二上 文夫
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2005 年 44 巻 2 号 p. 88-91

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抄録

背景:まれな乳腺良性病変である乳腺過誤腫を経験したので, その細胞および組織所見を報告する.
症例:30歳, 女性. 検診で右乳腺腫瘤を指摘され, 来院した. 右乳腺B領域に最大径2.5cmの腫瘍が認められ, 穿刺吸引細胞診と腫瘍切除術が施行された. 穿刺吸引細胞診では, 散在する裸核状細胞 (双極裸核) を背景に, 二相性の保たれた結合性の強い上皮細胞集団が散在していた. 大型の上皮集団は, 乳管・腺房からなる小葉単位に類似した構造をとっていた. いずれにも, 細胞異型はなかった. 脂肪細胞や平滑筋細胞は確認されなかった. 腫瘍切除標本では, 拡張した乳管と腺房からなる乳腺小葉が複数集簇した結節で, 小葉問には線維性組織が介在し, 一部で成熟脂肪細胞が少量混在していた. 腫瘤は, 境界明瞭で, 薄い線維性組織で覆われていた.
結論:乳腺穿刺吸引細胞診にて, 乳腺過誤腫と診断することは困難であり, 最も鑑別を要する病変は線維腺腫である. 乳管・腺房からなる小葉単位に類似した上皮細胞集団の出現が, 線維腺腫と異なる重要な細胞診所見と考えられた.脂肪細胞は, 必ずしも採取されるとは限らず, 鑑別診断に常に有用な所見とはいえなかった.

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