スポーツ社会学研究
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スポーツの空間とは何か?
スペクテイタースポーツと都市の関係を再考する
西山 哲郎
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2007 年 15 巻 p. 55-69

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抄録

本稿の目的は、ひとつには、グローバル化と情報化の進展によって脱中心的な編成をされるようになった現在を把握するために、有機体論的な社会モデルの代わりに、多次元的な空間モデルを提案することである。もうひとつの目的は、その空間モデルを使って、現代の都市生活に対するスペクテイタースポーツの意義を再考することである。
このふたつの目的のどちらにとっても、次のふたつの対立軸が重要と考えられる。
1. 情報化の発展にともなう、現実のヴァーチャル化と人格の断片化の進展 (あるいは役割を状況依存的に組み合わせただけの自己の出現) と、それに対する反発としての真性さと統一されたアイデンティティへの希求
2. 経済のグローバル化による消費者文化と個人主義の強化と、それに対する抵抗としての当事者性と共同体への憧憬
これらふたつの対立軸は、それぞれがさらに二つの次元によって構成されているが、現代の都市空間は、これら4つの次元によって引き裂かれ、同時にそれらの多次元的な連結によって支えられている。この連結のトポロジカルな構造 (あるいは運動) は、そこではある表出行為が容易に裏返しの効果と結びつく点において、「クラインの壺」にたとえるのが適切と思われる。
本稿では、スポーツスペクテイターの実践を手がかりに、上記のメカニズムをシミュレートすることで、現代における都市空間の編成を描出したい。

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