日本家畜臨床学会誌
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虚弱子牛に認められた腎臓形成異常
高畑 幸子千葉 正寛沼津 敬治渡辺 昭夫一條 俊浩蓬田 信一八島 正松田 敬一川名 晶子
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2004 年 27 巻 1 号 p. 1-6

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抄録

平成14年6月~8月までに管内黒毛和牛繁殖農家に飼育されていた子牛で子牛虚弱症候群と診断された3症例(症例1、13日齢、体重約12kg、雄。症例2、51日齢、体重約30kg、雄。症例3、2日齢、体重約10kg、雄。)について、臨床症状、血液生化学検査、超音波断層検査、病理組織検査および家系調査を行った。その結果、臨床症状については全症例において元気沈鬱、哺乳欲不振、発育不良および皮毛粗剛が認められた。血液生化学検査では全症例においてクレアチニン(Cre)の高値が認められ、症例1および2において血中尿素窒素(BUN)の高値が認められた。超音波断層検査では症例1で左腎は小さく分葉不明瞭であり、右腎は不明であった。症例2および3では左右腎臓は小さく分葉が不明瞭であった。剖検時の腎臓の肉眼所見でも、腎臓の表面は退色し分葉が不明瞭であった。組織学的には、全症例において未熟小型腎単位や原始集合菅が認められ、瘢痕化組織や炎症性反応は全く認められなかった。家系調査では全症例おいて茂金系種雄牛Aを頂点とした交配環境にあった。腎臓の形成異常は様々な要因によって引き起こされるが、全症例において種雄牛Aが深く関与しており、遺伝的疾患である可能性が推察された。また、血液検査で腎臓の異常が疑われる場合に超音波断層検査を行うことは、診断の一助になるものと考えられた。

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