1979 年 4 巻 1 号 p. 53-59
前報においてプロベナゾール (オリゼメート®) のイネいもち病防除メカニズムに関するいくつかの試験から, 薬効の発揮に寄主イネ体の関与が示唆されることを報告した. そこでプロベナゾールの効果をイネ体の変化に重点をおいて研究した. いもち病に対するイネの抵抗性要因として硅質化細胞の形成, イネ葉組織の形態変化およびイネ水孔からの浸出液の抗菌性について試験したが, プロベナゾール処理による変化は認められなかった. しかしながらイネ葉中のいもち病菌胞子発芽阻止物質はプロベナゾール処理イネで最も強く発芽阻止を示し, 接種のみの区では前者の1/2以下の発芽阻害にすぎなかった. またフェノール物質の酸化酵素としてのパーオキシダーゼ活性は胞子接種のみの区より本物質の水面施用処理と接種とを行なった区のほうが増強されている傾向が明らかとなった. したがって前報も含めて考えると, プロベナゾール処理によりイネは強い侵入抵抗とともに拡大抵抗をも示すことになり, これらが総合されて高い防除効果を発揮するものと考えた.