日本泌尿器科学会雑誌
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精巣腫瘍患者における血清および組織内胎盤性アルカリフォスファターゼ値に関する検討
西野 昭夫越田 潔山本 肇打林 忠雄内藤 克輔久住 治男平野 和行林 恭三
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1990 年 81 巻 10 号 p. 1506-1512

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抄録

1986年9月より1989年3月までの2年6ヵ月間に初回治療を行った精巣腫瘍患者40例について, 腫瘍組織内および血清胎盤性アルカリフォスファターゼ (PLAP) 値を測定した. 測法には monoclonal immunocatalytic assay 法を用いた.
組織内PLAP値では, セミノーマ組織は正常精巣組織の約92倍の高値を示し, 非セミノーマ組織と比較しても有意に高値を示した (p<0.01). 血清PLAP値では, セミノーマ群においては非セミノーマ群に比し有意に高値を示した (p<0.05). またセミノーマ群およびセミノーマ成分を一部含む混合型群では, 血清PLAP値の上昇例においては正常例に比し, 組織内PLAP値は有意に高値を示した (P<0.01). さらにセミノーマ群および混合型群では無転移症例に比し有転移症例において血清PLAP値は高値を示す傾向が認められた. 一方, 治療前後の血清PLAP値の変動について検討すると, 治療前高値を示したセミノーマ群および混合型群においては, 治療後17例全例に正常化を認めた.
以上より, 精巣腫瘍における血清PLAP値の測定は, セミノーマの診断, 病期分類, 治療効果判定, 経過観察の点において極めて有用で, PLAPはセミノーマの一つの腫瘍マーカーになりうると考えられる.

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