日本泌尿器科学会雑誌
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尿路結石症における尿中イオン化カルシウム定量に関する研究とその臨床的意義
南方 茂樹
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1990 年 81 巻 12 号 p. 1896-1903

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抄録

24時間尿中のイオン化Caの実測を試み, その測定方法の検討, 正常健康人およびCa結石患者群での比較, Ca結石患者のうち過Ca尿症および正Ca尿症患者における比較検討, 並びに再発防止治療の前後での尿中イオン化Caなどについて検討を行い, 以下の結果を得た.
イオン化Ca濃度の測定は, 検体尿のイオン強度の近似値を測定後, 各検体毎のCaイオン標準液を作製し, Ca選択電極を用いて行ったが, その再現性および正当性はほぼ満足のいくものであった.
尿中イオン化Ca濃度は総Ca濃度と強い相関がみられ, Caイオン化率はクエン酸および燐酸とは弱いながらも負の相関がみられた.
イオン化Ca排泄量はCa結石患者群では健康対照群に比較して著明な高値を示し, 更に, 過Ca尿症の結石患者群はイオン化Ca排泄濃度ならびに排泄量共に, 正Ca尿症群より有意の高値を示した.
クエン酸療法では, そのイオン化率は投与後有意の低下が認められ, 米糠療法では, 尿中イオン化Ca排泄量は投与後に有意な低下がみられ, Caイオン化率にも低下傾向が観察された.
以上より, 尿中イオン化Caの測定は, 他の結石関連物質の測定と同様に, 再発性Ca結石症患者の促進因子の重篤度の検討, あるいは, Ca結石症患者の再発防止療法の効果を検討するための重要な指標になり得るものと考えられた.

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