1992 年 83 巻 10 号 p. 1633-1639
1985年11月より1988年8月までの2年10ヵ月間に膀胱全摘術を施行し, 病理検査によって浸潤性膀胱癌 (pT2-4, pN0-2, M0) と診断された患者を対象としてシスプラチンを含む術後化学療法の予後に関する影響を多施設共同研究で検討した. また, 化学療法と共に免疫賦活剤 (OK-432) もしくは漢方製剤 (十全大補湯: TJ-48) を無作為に割り付け, 術後経過に対するこれらの影響も検討した. 登録された50症例のうち評価可能であった48例の生存率は, 3年が71%, 5年が67%で, 非再発率は3年, 5年ともに69%であった. 背景因子のうち予後に関連したものは, 腫瘍の組織学的悪性度と術後化学療法の投与回数であった. すなわち, Grade 2はGrade 3より3年, 5年生存率が, また, 術後化学療法の投与回数が3コース以上のものは2コース以下のものより3年生存率が有意に良好であった. pT2はpT3より, また, pN0/XはpNI1-2よりそれぞれ良好な生存率曲線を呈したが, 有意差ではなかった. OK-432やTJ-48の併用投与の有無, 放射線や動注療法などの術前治療の有無, および術後化学療法の種類別にはほとんど差を認めなかった. 補助化学療法の副作用に重篤なものはなく, 70%以上の患者に3コース以上の投与が可能であった. 以上より, 浸潤性膀胱癌に対する膀胱全摘術後の補助化学療法は, 施行するのであれば3コース以上の投与が望ましいと考えられた.