1992 年 83 巻 12 号 p. 2058-2061
HTLV-1 associated myelopathy (HAM) の未加療の患者21例を対象として, 排尿状態および尿流動態の検討を行った. 排尿障害は, 90%にみられ, 閉塞症状のみ33%, 刺激症のみ19%, 閉塞症状と刺激症状の合併36%であった. 排尿障害とHAMの主症状である歩行障害との出現時期を比較してみると, 歩行障害が先行あるいはほぼ同じ頃に生じた症例が76%であったが, 14%に排尿障害が初発症状としてみられた. 膀胱内圧測定では, 過活動型が66%と大半を占めたが, 低, 無活動型も15%に認められた. また後者は前者に比し残尿, 初発尿意, 最大尿意とも有意に増加していた. 尿道機能としてUPP上は異常所見は認めなかったが, DSDが62%にみられた.
以上の排尿障害は, HAMの主病変である胸髄側索変性に基づくものと推察されるが, 低, 無収縮膀胱を示す症例では腰仙髄が, 尿意が障害された症例では後索にも変性が及んでいる可能性が示唆される.