日本泌尿器科学会雑誌
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尿路移行上皮癌におけるCA19-9の検討
血清値, 組織内濃度および免疫組織化学的検討
黒川 公平栗原 潤中田 誠司松尾 康滋海老原 和典栗原 寛鈴木 孝憲今井 強一山中 英寿鈴木 慶二
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キーワード: 尿路移行上皮癌, CA19-9
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1993 年 84 巻 6 号 p. 1074-1081

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抄録

尿路移行上皮癌 (TCC) におけるCA19-9測定の有用性を知る目的で, TCC43例, 対照13例の血清値, 組織内濃度, 免疫組織化学的検索および血清異常高値例の経過観察を行い次の結果を得た.
1) 血清値では, 対照例平均19.1U/ml, 腫瘍例平均298U/mlであり統計学的差はなかった. 異常高値例は対照例13.7%, 膀胱癌例13.8%および腎盂尿管癌例57.1%に見られた.
2) 組織内濃度については, 対照616U/g wet tissue, 腫瘍13,000U/g wet tissue であり, 腫瘍は有意に高値となった (p<0.01).
3) 免疫組織化学的検索については, 陽性例は対照4.0%, 腫瘍88.4%であった.
4) 血清値および組織内濃度は, r=0.483で有意に相関した (p<0.05).
5) 血清値は, 免疫組織化学的検索, 腫瘍サイズ, 異型度および深達度とは相関しなかった.
6) 組織内濃度は, 腫瘍サイズと相関したが, 免疫組織化学的検索, 異型度, 深達度とは相関しなかった.
7) 異常高値例の経過観察では, 術後正常化しない例は必ず再発癌死した. 術後一時的に正常化しても, その後上昇する例もすべて再発した. 術後正常化しかつ持続する例のみ, 転移なく生存中である. しかし, 膀胱内再発は血清値からは予測できなかった.
8) 以上より, CA19-9はサイズの大きなTCC特に腎盂尿管癌に対して一度は測定しておくべきマーカーと考えられた.

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