日本泌尿器科学会雑誌
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抗癌剤による spermatogenesis 障害に対するFSHの障害防御および回復促進効果の検討
南部 明民熊本 悦明
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キーワード: FSH, Sertoli 細胞, 抗癌剤
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1995 年 86 巻 7 号 p. 1231-1239

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抄録

抗癌剤 (CDDP, adriamycin) による spermatogenesis 障害モデルを用いて, Sertoli 細胞機能を賦活する目的でFSHを投与し, spermatogenesis 障害が防御されうるか, あるいは spermatogenesis 障害からの回復が促進されうるか検討した.
FSHと抗癌剤の同時投与による防御効果は, 組織学的に有意な差はなかった. PCNA labeling index によるDNA合成能および精巣組織内 transferrin 濃度による Sertoli 細胞機能についても有意な効果は認めなかった.
障害からの回復期におけるFSHの投与 (回復促進効果) の検討では, CDDP投与群では spermatid index が対照群 (FSH無投与群) で1.02±0.24に対しFSH75IU/kg投与群で1.50±0.15, 150IU/kg投与群では1.62±0.39と有意に上昇した (p<0.05). DNA合成能および Sertoli 細胞機能についても有意なFSHの効果が認められた.
Adriamycin 投与群では組織所見に有意な効果は認めなかったが, DNA合成能および Sertoli 細胞機能ともにFSHによる回復促進効果が認められた.
今回の実験から, FSHを投与することによって抗癌剤の spermatogenesis 障害を防御することはできなかったが, 障害からの回復過程はFSHによって促進されるという結果が得られた.

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