日本泌尿器科学会雑誌
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腎癌の予後規定因子としての原発巣と転移巣の病理組織学的比較
福田 百邦
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キーワード: 腎癌, 転移巣の異型度, 予後
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1995 年 86 巻 4 号 p. 870-877

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抄録

100例の腎癌の原発巣と転移巣の病理組織像について比較検討し, 以下の結論を得た.
1) 59例 (59.0%) で原発巣と転移巣の grade の一致を認めたが, 31例 (31.0%) で転移により grade up が, 10例 (10.0%) で grade down が観察された.
2) Grade の変化は転移発生時に生じるものと考えられるが, 転移巣内で腫瘍が発育する過程で生じる可能性も示唆された.
3) 40歳以下の若年者では, grade up 症例が少なく, 女性は男性に比較して grade up する頻度が少ない傾向であった.
4) 原発巣が淡明細胞型のみの症例の転移巣には, 紡錘細胞型ないし多形細胞型は認められなかった.
5) 腎摘症例で転移巣の grade 1から4の転移出現後の1年生存率は, それぞれ, 100%, 65%, 71%, 27%であり, grade 2と grade 4間 (p<0.005), および grade 3と grade 4間 (p<0.01) には有意差を認め, 転移巣の grade が, 転移出現後の予後を決定する重要な因子であることが示された.
6) 転移を有する患者の予後は, 原発巣の grade に転移巣の grade も加味して考えることが望ましい.

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