日本泌尿器科学会雑誌
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カンジダ腎感染症における血清D-アラビニトール測定の意義
阿部 貴之
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1999 年 90 巻 8 号 p. 697-705

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抄録

(目的) 血清D-アラビニトール測定により, カンジダ腎感染症と無症候性カンジダ尿症との鑑別が可能か, またカンジダ腎感染症の早期診断および治療のモニタリングとして有用かを検討した. カンジテック®と血清β-D-グルカンとの比較も同時に行った.
(対象と方法) 1.実験的検討: カンジダ腎感染ラットと正常ラットの血清D-アラビニトールを測定し, 両群の比較からカットオフ値を設定した. 次にラットにカンジダ接種後, 血清D-アラビニトール, カンジテックを経時的に測定した. さらにカンジダ腎感染ラットに経日的に抗真菌薬であるフルコナゾールを0.5mg投与し, 両者の推移を追った. 2. 臨床的検討: 尿培養でカンジダ属が検出された臨床症例において, 血清D-アラビニトール, カンジテックに血清β-D-グルカンも加え同時に測定し, カンジダ腎感染症の診断が可能かを比較検討した.
(結果) 診断感度を重視し, なおかつ特異度も高くなる2.0μg/mlを血清D-アラビニトールのカットオフ値とした. ラットにおいてカンジダ腎感染成立にともない血清D-アラビニトール値は上昇し, 治療開始により低下傾向を示した. カンジテックはすべて陰性であった. また臨床例においてもカンジダ腎感染症では血清D-アラビニトールとβ-D-グルカンはほとんどの症例で高値を示し, 治療により低下した. カンジテックの陽性率は低かった.
(結論) 血清D-アラビニトールはカンジダ腎感染症の早期診断として, また治療のモニタリングとしての有用性が示唆された.

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