日本泌尿器科学会雑誌
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勃起不全患者の虚血性心疾患について
川西 泰夫木村 和哲山口 邦久中逵 弘能岸本 大輝小島 圭二山本 明沼田 明十河 泰司
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2000 年 91 巻 12 号 p. 708-714

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抄録

(背景) 勃起は血流動態に依存する機能であるので, 勃起不全は全身性動脈閉塞性疾患と関連の高い疾患であると予想される. 特に虚血性心疾患は重要であると思われるが, これまで十分な検討が行われていない.
(対象と方法) 勃起不全を主訴に受診した58例を対象として虚血性心疾患に関する検討を行った. 勃起誘発試験とカラードプラ検査装置による海綿体動脈の血流測定を施行した. 虚血性心疾患の既往のある症例には循環器検査について主治医に照会し, 虚血性心疾患の既往のない症例には胸部レントゲン写真, 安静時心電図検査, 負荷心電図検査を行った. 必要に応じて心臓超音波検査, トレッドミル負荷心電図検査, エルゴメーター負荷心筋シンチグラフィ検査, 冠動脈造影検査を行った.
(結果) 58例のうち18例, 31.0%が虚血性心疾患もしくはそのハイリスク群と診断された. これら18例のうち16例が1つ以上の虚血性心疾患の危険因子を有しており, 高年齢, 高脂血症, 糖尿病が有意な因子であった. 海綿体動脈の収縮期最大血流速度が35cm/sec. 以上の症例の3.7%が, 35cm/sec. 未満の症例の54.8%が虚血性心疾患もしくはそのハイリスク群であった.
(結論) 勃起不全患者が虚血性心疾患を合併している頻度は高い. 海綿体動脈の血流速度が低値の症例や危険因子を有する症例に勃起不全の治療を行う場合には運動負荷試験を行い, 虚血性心疾患の有無を診断するべきである.

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