日本泌尿器科学会雑誌
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前立腺癌永久挿入密封小線源治療後のPSA bounce 現象に関する検討
森田 將深貝 隆志島田 誠吉田 英機John L. Lederer
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2004 年 95 巻 3 号 p. 609-615

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抄録

(目的) 限局性前立腺癌に対する経会陰的永久挿入密封小線源治療 (TIPPB) 後にしばしば観察される前立腺特異抗原 (PSA) 値のバウンス現象 (PSA bounce) に関して検討した.
(対象・方法) 1998年12月から2003年5月までに, 限局性前立腺癌患者500例に対して, I-125またはPd-103を使用したTIPPBを施行した. 今回は, 術後の血清PSA値測定による経過観察期間が2年以上であり, ホルモン療法未施行の200例に関して検討した. 術後2年間は3ヵ月毎, 以後6ヵ月毎に血清PSA値を測定した. PSA bounce とは, 血清PSA値が術後, 連続的に下降した後, 上昇前値から0.1ng/ml以上の一過性の上昇を認め, その後, 上昇前値またはそれ以下の nadir に達した現象と定義した. また, biochemical failure の判定に関しては, The American Society for Therapeutic Radiology and Oncology (ASTRO) consensus panel (1996) の定義を使用した.
(結果) 200例中80例 (40%) にPSA bounce を認めた. PSA bounce 出現までの期間の中央値は術後13ヵ月, bounce 前値からの血清PSA上昇値の中央値は0.3ng/mlであった. PSA bounce の出現後に再度血清PSA値の上昇を認め, biochemical failure を示した症例はなかった. 12例が血清PSA値測定の3回以上に及ぶ連続上昇を示し, 1時的にASTROの定義での biochemical failure と判定したが, そのうち10例 (83.3%) はその後血清PSA値が再下降し, nadir を得た. よって, 観察期間内に継続的な血清PSA値の上昇を認め, biochemical failure と判定したのは2例のみであった.
(考察) TIPPB後にPSA bounce 現象が見られることは稀ではなかった. PSAが連続3回以上の測定で上昇が観察された後, nadir となった症例を10例に認めた. こういった症例では最終的にはPSA bounce の判定になるが, 経過観察中には一時的に biochemical failure と判断することになり, 経時的な定義上の変化が生じ, 患者の status の判断に混乱を来すと考えられた.

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