日本泌尿器科学会雑誌
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間質性膀胱炎52症例の臨床的検討
金子 智之藤田 喜一郎本間 之夫
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2006 年 97 巻 6 号 p. 771-776

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抄録

(目的) 本邦における間質性膀胱炎の現状の一端を示すものとして, 当院において麻酔下膀胱水圧拡張術を行った間質性膀胱炎症例の臨床的検討を行った.
(対象と方法) 2002年7月から2004年12月までの30ヵ月に, 臨床症状より間質性膀胱炎が疑われ, 麻酔下膀胱水圧拡張術を施行した間質性膀胱炎の52症例を対象とした. 拡張術時に Hunner's ulcer (HU) を認めた場合には潰瘍部の経尿道的電気凝固 (TUC) を行った. 52症例の臨床像, 水圧拡張術の効果などについて検討した.
(結果) 52症例のうち, 女性は44例 (85%), 男性は8例であった. 初診時の平均年齢は55歳 (24~78歳) であった. 発症から診断確定までには平均59ヵ月 (2~388ヵ月) を要した. 初診時の症状は頻尿が92%ともっとも多く, ついで膀胱痛・下腹部痛 (54%), 排尿困難 (40%) の順であった. 1日排尿回数は平均19回 (8~52回) で, 平均1回排尿量は平均100ml (33~260ml) であった. 水圧拡張術における最大膀胱容量は平均580ml (220~880ml) であり, 拡張後には全例で点状出血がみられた. 水圧拡張術後1ヵ月にて75%の症例で症状の改善がみられ, 術後12ヵ月の有効率は67%であった. 術後観察期間は平均15ヵ月 (2~30ヵ月) であった. HUを認めた症例 (潰瘍型) は37%で, 潰瘍型症例は初診時の平均年齢が有意に高く (60歳対52歳), 最大1回排尿量 (140ml対230ml), 水圧拡張時膀胱容量 (500ml対620ml) は有意に少なかった. しかし, 水圧拡張術の有効率は有意に高かった (95%対64%).
(結論) 間質性膀胱炎患者は強い症状がありながら, 診断されるまでに長期間を要している. 水圧拡張術は症状緩和に有効であり, 特に潰瘍型ではTUCを併用することで効果が高まると考えられる. 間質性膀胱炎についてはさらなる研究が必要である.

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