日本透析療法学会雑誌
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小児血液透析患者における二次性副甲状腺機能亢進症例の検討
副甲状腺摘出術の適応について
服部 元史伊藤 克己甲能 深雪川口 洋長田 道夫永田 道子小松 康宏武田 優美子
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1988 年 21 巻 8 号 p. 763-769

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抄録

最近, われわれは副甲状腺摘出術 (PTx) 施行に際し, その手術適応の判断に苦慮した2名の血液透析 (HD) 患児例を経験した. しかし小児においてはその手術適応が明確でないのが現状である. そこで, 現在東京女子医大腎センター透析室小児科管理の17例を対象として, 副甲状腺機能状態, 臨床症状, さらにアルミニウム (Al) 蓄積状態について検討を加えた. それによれば, 14例 (82.4%) までが副甲状腺機能状態は良好に維持されており, 小児HD患者にみられる二次性副甲状腺機能亢進症 (2°HPT) は内科的保存療法で十分コントロールされるものと思われた. 高度2°HPT例は2例 (11.8%) にみられたが, いずれも薬剤服用のコンプライアンスが非常に低かった症例であり, 特に小児の場合では, 薬剤服用のコンプライアンスを常に考えて管理する必要性が示唆された. 小児2°HPT例は高度な骨変形, 成長障害を来し易いにもかかわらず, 骨・関節痛などの自覚症状に乏しいという臨床的特徴を有していた. このことを考慮した場合, 高度2°HPT例には小児の場合でも内科的保存療法に固執せず, 骨変形予防を目的としてPTxを積極的に施行してもよいと思われた. 近年, PTx後Al骨症が発症・増悪するという報告がみられ, 2°HPTとAl蓄積との相互関係が注目されている. デスフェラール (DFO) 負荷テスト (20mg/kg) でみた体内Al蓄積状態では, ΔAl 200μg/l以上の例が9例 (52.9%) にみられ, さらに透析期間に比例して体内Al蓄積量は増加していた. また今回PTx施行した患児の場合も, ΔAl 240μg/lと高度なAl蓄積状態にあった. これらのことより, 小児の場合でもPTx施行に際し, Al蓄積状態を十分に検討する慎重な態度が必要であると思われた. 今後, 小児科領域でもAl骨症を中心とするAl毒性が大きな問題になると思われ, Al負荷軽減対策ならびに体内に蓄積したAlの積極的な除去法の確立が早急に必要であると考えられた.

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