日本透析療法学会雑誌
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血液透析患者の胃粘膜血流量の検討
徳田 雄一魚水 憲二大塚 秀行山下 亙森田 隆久田中 啓三上山 達典中島 晢原田 隆二渋江 正橋本 修治
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1989 年 22 巻 7 号 p. 737-740

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抄録

血液透析患者の胃粘膜病変の発生機序解明のため血液透析患者の胃粘膜血流量を内視鏡下で測定した. 対象は, 血液透析患者28名 (男性14名, 女性14名, 年齢27-81歳) で, コントロール群として胃粘膜病変を認めなかった健康者25名 (男性12名, 女性13名, 年齢39-78歳) の胃粘膜血流量を測定した. 血液透析患者の胃粘膜血流量は, 胃体上部大弯19.8±6.4ml/min/100g, 胃体下部小弯18.7±5.9ml/min/100g, 前庭部小弯20.4±6.8ml/min/100g, 前庭部大弯19.0±8.3ml/min/100gであった. これに対してコントロール群では, 胃体上部大弯26.2±8.5ml/min/100g, 胃体下部小弯24.4±8.1ml/min/100g, 前庭部小弯23.0±7.1ml/min/100g, 前庭部大弯19.2±5.9ml/min/100gであった. すなわち血液透析患者ではコントロール群に比して胃体部で胃粘膜血流量の低下がみられ (胃体上部大弯p<0.01胃体下部小弯p<0.05) ストレス性の病変が起こりやすい状態にあると考えられた. しかし, 血液透析患者の胃粘膜病変の多くは胃前庭部に発生しており, このことは胃粘膜血流量では説明できず今後の検討が必要だと考えられた.
胃粘膜血流量に影響を与える因子としては, 血液透析患者では, 加齢により胃体部, 前庭部共に胃粘膜血流量の低くなる傾向がみられたが, 性別, 病変の有無による胃粘膜血流量の差はみられなかった.

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