日本透析療法学会雑誌
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透析導入後の予後からみた糖尿病性腎不全患者の至適導入時期の検討
馬場園 哲也
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1990 年 23 巻 11 号 p. 1245-1251

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抄録

糖尿病性末期腎不全患者152名の, 透析導入時の臨床症状および血清クレアチニン (S-Cr) からみた導入時期と, 予後との関係をprospectiveに検討することにより, 糖尿病性腎不全患者の至適導入時期に関する考察を行った.
溢水症状が高度なため透析に導入した65名は, 導入時溢水が軽度であった87名に比べ, 導入時の平均S-Cr値が有意に低いにもかかわらず導入後の予後は不良であった. 導入時溢水が軽度であった87名を導入時のS-Cr値で分類すると, S-Crが7.0-9.0mg/dlで導入した41名の予後は, 9.0mg/dl以上で導入した46名に比べ良好であり, median生存期間に4年以上差を認めた.
全152名のうち観察期間中58例が死亡したが, その死因として心疾患, 感染症, および突然死が高頻度であり, macroangiopathyと自律神経障害が予後に大きく影響していると考えられた.
糖尿病性腎不全患者の透析導入の指標として, 高度の溢水症状を改善するための緊急導入に加え, 予後の点からは, 溢水が軽度でS-Crが7.0-9.0mg/dlの段階での早期計画導入が重要であると考えられた.

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