日本透析療法学会雑誌
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肺病変に対し血漿交換が効果を示したと思われた進行性腎炎の1例
街 稔河村 元博岩崎 滋樹遠山 純子須藤 睦雄長瀬 光昌
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1990 年 23 巻 7 号 p. 717-721

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抄録

38歳女性. 昭和62年5月初旬に発熱, 咳嗽出現. 5月下旬に呼吸困難, 血痰出現したため某院受診. 血痰持続し腎不全も発見されたため当院入院となった. 入院時高度の低酸素血症を呈し, 胸部X線上右下肺野にのみ斑状陰影が限局性に認められたが, 斑状陰影は急速に拡大, 進展し, 血痰の増量も認め, 入院3日目には斑状陰影は両側全肺野におよび, 腎不全も増悪し血清クレアチニンは2.8mg/dlから3.7mg/dlに上昇した. これに対しプレドニゾロン60mg/日連日投与を開始するとともに, 新鮮凍結血漿3.2lを置換液とした血漿交換を連日3日間施行したところ, 肺病変は改善傾向を示し, 低酸素血症は軽快し血痰の消失も認めた. さらに血漿交換を繰り返し施行し, 入院14日目の胸部X線では斑状陰影は全て消失し, 腎不全も改善し血清クレアチニンは2.5mg/dlに低下した. 入院19日目に施行した腎生検像は, 光顕ではほぼ全糸球体に全周性の半月体形成が認められ, 電顕では糸球体基底膜内皮側およびメサンギウムにelectron dense depositが認められたが, 蛍光では特記すべき所見は得られなかった. 腎生検後, メチルプレドニゾロン1,000mg/日3日間のパルス療法により, 血清クレアチニンは1.6mg/dlまで低下した. 入院時喀痰担鉄細胞は検出されず, 血清および血漿交換濾液中の抗糸球体基底膜抗体は陰性であった. 肺病変に対し血漿交換が著効を呈したと思われたので報告する.

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