日本透析療法学会雑誌
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血液透析患者のエンドトキシン抗体の測定とその臨床的意義
安達 高久山上 征二岸本 武利前川 正信川村 正喜
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1991 年 24 巻 4 号 p. 469-474

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抄録

近年, 透析液の細菌やエンドトキシンによる汚染の増強とhigh-flux膜の使用により, エンドトキシンのサブユニットやフラグメントが患者血液内に侵入している危険性が指摘されている. そこで著者は, avidin-biotinの強い親和性と抗原抗体反応の特異性を利用したenzyme-linked immunosorbent assay (ELISA) 法を用いて, 透析患者血液中のエンドトキシン抗体を測定した. まず最初に透析液中の細菌の分離・培養と同定, さらにこれより温フェノール法を用いてエンドトキシンの抽出を行った. さらにこの抽出したエンドトキシンとE. coli J-5のエンドトキシンが, ELISA法において交差反応を示すことを確認した. 次に加熱処理した菌体で免疫した家兎より得た標準エンドトキシン抗体について, immuno-blottingを行い抗体価の確認を行った. さらにこの標準エンドトキシン抗体を用いてELISA法による検量線を作製し, 抗体陽性の規準を設定した. 以上の予備実験に基づいて, 透析患者101名と健康対照者21名についてE. coli J-5のエンドトキシンを抗原として血液中のエンドトキシン抗体を測定した.
結果は, 正常対照群では21名中4名 (19%), 従来の膜を使用した群では54名中14名 (26%) が抗体陽性であり, 一方high-flux膜使用患者では47名中28名 (60%) が抗体陽性であり, x2 (カイ自乗) 検定の結果, 前2者に比較し有意に高値を示した. この結果は, 特にhigh-flux膜使用患者において, 透析液中のエンドトキシンが血液内に侵入していることを強く示唆するものであった.

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