日本透析療法学会雑誌
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Biofiltrationを用いた治療時間短縮の試み
奥山 寛伊藤 克佳大段 剛雨宮 均小林 力北岡 建樹越川 昭三小尾 容子本沢 孝友西山 謙一高橋 淳子
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キーワード: 短時間透析
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1991 年 24 巻 7 号 p. 919-924

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抄録

Urea index (UI) を透析量の指標に, ハイパフォーマンス膜透析器 (HPM) を用いた短時間biofiltration (BF) を最大6か月間継続し, 各種溶質の治療前血清濃度の推移, 治療中の臨床症状について従来の透析器 (OD) を用いた重炭酸透析 (BCHD) を対照に検討した. また同-のHPMを用いた血液透析とBFの各溶質除去効果についても比較検討した. 対象は1回4-5時間, 週3回のBCHDを行っている安定期透析患者5名で, BFではNa濃度を140mEq/lに調整した重炭酸透析液のA液のみを透析液に用い, 置換液は等張重炭酸Na液 (ジュータミン®) を1.9l/h, 後希釈法で使用した. 治療時間はBCHD時のUIを保持するよう血液流量を調整し設定, 4.3±0.3 (BCHD) から3.3±0.3時間 (BF) に短縮させた. BF変更前後の治療前血清溶質濃度の推移では, HCO3は変更前18.1±2.5から22.6±2.6mEq/l, β2-microglobulin (β2-MG) は60.0±8.5から45.0±10.6mg/lと, BF変更後HCO3は有意の上昇, β2-MGは有意の低下を示し, 他の溶質には変化はみられなかった. 治療中の症状と処置は, 発生頻度, 程度, 処置回数等をindex化し定量的に比較したが, 変更前後で差は見られなかった. 同-HPMを用いたBCHDとBFで溶質除去効果を比較すると, BFがリン (P), β2-MGの除去率で有意の高値を示したものの, 除去量ではすべての溶質でBCHD, BF間に差は認められなかった. UIを指標として設定した短時間BFは, 最大6か月間の治療においても同-UIのBCHDをしのぐ十分な治療効果を示し, 治療時間短縮による不均衡症候群の増悪も認められなかった. また, 治療時間を短縮しても同-のHPMを用いたBCHDと同等の溶質除去効果が得られた. 以上よりUIは短時間治療の至適条件を設定する有用な指標で, BFは治療時間短縮のための有効な手段と考えられた.

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