日本透析療法学会雑誌
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慢性透析患者におけるerythropoietin長期投与時の心血行動態と血管作動性内分泌諸因子の変動
飯村 攻浦 信行島本 和明米倉 修二工藤 靖夫木島 敏明藤瀬 幸保柴田 真吾佐藤 敏大野 克幸西谷 隆宏河口 道夫長井 靖仁井上 恵安藤 利昭峯廻 攻守本江 正臣今野 敦尾崎 文夫高田 徹丹呉 寿男前田 剛山口 康一遠藤 利昭石田 宏之渡井 幾男
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1993 年 26 巻 1 号 p. 49-55

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抄録

慢性透析例では, erythropoietin (EPO) による貧血是正が自・他覚症状を改善するが, その機序は十分解明されているとは言い難い. 今回我々は心血行動態と血管作動性内分泌因子の面から, 自・他覚症状改善の機序を検討した. ヘマトクリット (Ht) 値23.5%以下の透析患者28例を対象とし, Ht値25-30%を維持すべく12か月間EPOを投与した. EPO投与前後に血圧, 心拍数, 体重, 末梢血液検査, 胸部X線の各検査と, マスター2階段運動負荷心電図, 心エコー図 (UCG) を施行した. さらに, 血漿のノルアドレナリン (pNA), レニン活性 (PRA), アンジオテンシンII (AII), 心房性ナトリウム利尿ペプチド (ANP) を同時測定した. EPO平均投与量は, 全経過中毎週約4,500単位であった. Ht値は19.6%より1か月後ですでに有意に上昇, 2か月以後は約27%を維持し, これに平行して自覚症状も改善した. 血圧, 心拍数, 体重, 心胸郭比, 安静時心電図に有意な変動はなかったが, 運動負荷時の心拍数増加は有意に抑制され, この際の自覚症状も明らかに改善した. UCG上, 1回拍出量, 心拍出量は有意に減少したが, 左室駆出分画には変動を見なかった. 総末梢血管抵抗 (TPR) は, 3か月後には有意に増加したが, 以後漸減した. 内分泌因子ではpNAが早期より低下, PRA, AIIは9か月後より低下したが, ANPは不変であった. Ht値と諸因子間に相関は認めず, ANPは心胸郭比とのみ正相関を示した. 以上の成績より, 慢性透析患者へのEPO長期投与は, 自・他覚症状の改善に有用であることが判明した. これには少なくとも高心拍出量状態の是正と, 加えて後期では, 初期に上昇したTPRの低減の両者が関与すると考えられ, それらの機序の-部に交感神経活性亢進の改善, レニン・アンジオテンシン系の抑制が関わるものと考えられた.

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© 社団法人 日本透析医学会
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