日本透析療法学会雑誌
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CAPDにおける持続性または再発性腹膜炎に対する一期的カテーテル交換
熊野 和雄志村 哲横田 眞二酒井 糾北条 みどり飯高 喜久雄
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1993 年 26 巻 5 号 p. 657-661

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抄録

持続性腹膜炎4例, 再発性腹膜炎7例の計11例 (グラム陽性菌9例, グラム陰性菌2例) に一期的カテーテル交換を行った. カテーテルの抜去と再挿入を同じ部位で行ったのは9例で, これらの症例ではカテーテル出口部は以前の部位よりなるべく離れた位置に作製した. トンネル感染を認めた2例では抜去の対側よりカテーテルを挿入した. 術前腹膜炎症状が持続もしくは透析液細胞数が正常域に復さなかった持続性腹膜炎4例および再発性腹膜炎2例いずれにおいてもカテーテル交換により腹膜炎症状, 透析液細胞数の急激な改善を認めた. 11例中1例に術後14日目に腹膜炎の再発を認めたが, その他の10例においては術後抗生剤中止4週以内の再発は認めなかった. この例では術直前の透析液より細菌が検出された. 術直前の透析液細菌培養は11例中9例が陰性であるにもかかわらず, 抜去した腹膜カテーテルからは10例中6例と高率に細菌が検出された. 以上より, 抗生剤に抵抗性腹膜炎ではカテーテルに付着した細菌が何等かの関与をしていることが示唆され, カテーテルの交換の臨床的有用性を支持するものと思われた. 以上のようにカテーテルの一期的交換は持続的腹膜炎に対しては腹膜炎の治療期間を短縮させ, 再発性腹膜炎に対しては再発を防止することが可能であり, 血液透析を必要とせず, カテーテル挿入と抜去の2度の手術を避けるなどのメリットを有しており, 症例によっては試みてみるべき治療方法と思われる. なお, カテーテル交換前には充分な抗生剤の投与が重要と思われる.

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