日本透析医学会雑誌
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CAPD排液中アミラーゼの高値を示した穿孔性腹膜炎の2例
大城 望史田中 一誠宮本 和明伊藤 孝史住元 一夫大石 幸一木村 まり藤高 嗣生板本 敏行福田 康彦
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1998 年 31 巻 5 号 p. 953-957

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抄録

持続携帯式腹膜透析 (CAPD) 施行中に, カテーテル感染に起因する, いわゆるCAPD腹膜炎は, 比較的頻度の高い合併症である. しかし, これらの中には外科的処置を必要とする急性腹膜炎が含まれることもあり, これらの鑑別は臨床的に極めて重要である. 我々は2例の穿孔性腹膜炎症例を経験し, そのCAPD排液中のアミラーゼ値は著明な高値を示した. すなわち, S状結腸穿孔例では9,550U/l, 回腸穿孔例では614U/lであり, 2例とも緊急開腹手術が施行された. 我々の測定した排液中アミラーゼ値は, 平常時では6.6±6.0U/l (n=175) であったが, CAPD腹膜炎時では10.7±9.3U/l (n=37) と, 後者のほうが有意に (p=0.001) 高値を示した. 他の報告例も参考にすると, CAPD排液中のアミラーゼ値が少なくとも100U/l以上を示す場合には, 単なるCAPD腹膜炎ではなく, 重篤な腹腔内合併症の存在を示すものと考えられた. 以上のことから, CAPD排液中のアミラーゼ値の測定は, CAPD腹膜炎との鑑別, 外科的腹膜炎などの重篤な合併症の存在の有無を診断し得るものとして, 極めて有意義であることが示唆された. 従って, この検査は, CAPD腹膜炎の際には, ルーチン検査として行われるべきものと考えられる.

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