日本透析医学会雑誌
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慢性腎不全患者における心血管造影検査後の非イオン性ヨード造影剤の薬物動態 (血中および尿中濃度からの検討)
君川 正昭岡部 正明青柳 竜治小幡 紀夫寺岡 慧
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2002 年 35 巻 12 号 p. 1515-1521

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抄録

慢性腎不全患者に対して造影検査をする機会が増加しているが, 造影剤にはさまざまな副作用が知られており, 一般的に腎不全患者では検査後直ちに血液透析を施行して造影剤を除去すべきとされている.
今回大量の造影剤による心血管造影検査を行った維持血液透析患者8名と透析導入前の慢性腎不全患者4名について, 検査後直ちに血液透析を施行し, 透析中の血中ヨウ素濃度および透析導入前の慢性腎不全患者では尿中ヨウ素濃度も併せて測定し, 造影剤の薬物動態について検討した.
維持透析患者, 透析導入前の慢性腎不全患者とも時間依存性に造影剤は除去され, 除去率は維持透析患者では1時間後平均44.6% (37.1-54.7%), 2時間後平均60.5% (50.6-71.1%), 3時間後平均71.4% (62.6-80.5%), 透析終了時平均85.1% (79.4-95.5%) であった. うち5名の維持透析患者で測定したヨウ素クリアランスは透析開始後15分, 30分で平均110mL/min (100-122mL/min), 113mL/min (100-121mL/min) であった. 透析導入前の慢性腎不全患者で測定した尿中ヨウ素濃度は長時間持続して高濃度で, 検査翌日の尿中にも高濃度のヨウ素が検出された. 造影検査直後の血中ヨウ素濃度は体重当たりの使用造影剤量 (mL/kg) と比較的強い相関 (r=0.82, p<0.001) があった. したがって検査直後の血中濃度をある程度予測することが可能であり, 造影剤除去目的で透析を実施する際に有用と思われた.
血液透析は造影剤の除去に有効であった. 透析導入前の腎不全患者の尿中には高濃度のヨウ素が検査翌日でも検出され, 腎機能保持のために検査当日だけでなく検査後数日間は経口摂取や輸液等を十分に行い, 利尿により積極的に造影剤の排出を図るべきと思われた.

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