2003 年 36 巻 9 号 p. 1453-1456
症例は55歳, 女性. 平成9年より膜性腎症によるネフローゼ症候群にて治療を受けたが, 徐々に腎機能が悪化し, 平成13年1月より透析が必要となった. 開腹手術の既往もあり, 高度の低蛋白血症のため, 当初, 血液透析を選択した. しかし, 内シャント術を施行したが, 凝固亢進状態のため閉塞し, さらに, グラフトを用い再度内シャント術施行するも再閉塞した. そこで, 腹膜透析療法を試みたところ合併症もなく順調に施行でき1年経過している.
低蛋白血症では, 一般的に腹膜を通して, 低蛋白血症の進行などでの合併症が懸念され, 腹膜透析は避けられる傾向にある. しかし, ネフローゼ症候群で凝固能が亢進した場合などは, 積極的な選択肢の一つであると考えられた.