日本透析医学会雑誌
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ポリウレタン人工血管 (Thoratec®) にて全身性接触性皮膚炎を発症した1例
大野 晃杉浦 真理子加藤 規利森弘 卓延加藤 ふみ伊藤 晃山崎 親雄
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2006 年 39 巻 2 号 p. 145-149

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抄録

症例は50歳, 女性. 28歳の頃から蛋白尿があり. 2004年5月, 近医で腎機能障害を指摘され, 当院に紹介された. 5月25日, 右前腕にポリウレタン人工血管 (Thoratec®) を用いて内シャントを作製した. 6月10日, グラフトに沿った小水疱を伴う滲出性紅斑と全身の浮腫性紅斑が出現した. Thoratec®のパッチテストは72時間で陽性であった. グラフト周囲と背部の浮腫性紅斑部位の皮膚生検の結果, ともに接触性皮膚炎の所見を認め, 全身性接触性皮膚炎と診断した. 好酸球増多はごく軽度であった. ステロイド剤を静脈内投与し, 6月22日, Thoratec®を全摘出した. アレルゲンの除去という観点から, 動脈側吻合部は自己血管のパッチで修復し, Thoratec®の断端は残さないようにした. Thoratec®摘出後, 術創に膿瘍を形成し, ドレナージを必要とした. また, Thoratec®摘出後, 好酸球増多症が増悪した. ステロイドの全身投与を行い, 約2か月で症状は軽快した. Thoratec®によるアレルギーの報告は過去になく, まれな症例と思われる.

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