心電図
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急性前壁中隔梗塞時の下壁誘導ST変化の意義: 左前下行枝一枝病変における検討
松井 由美恵唐川 正洋中森 久人栗本 透岩坂 壽二稲田 満夫
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1991 年 11 巻 1 号 p. 10-17

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抄録

左前下行枝一枝病変による初回前壁中隔梗塞21例の下壁誘導ST変化について検討した.下壁誘導ST低下を示した例 (ST低下群) は12例, ST低下が小さい, もしくはなかった例 (ST非低下群) は9例であった.ST低下群ではST非低下群に比してI・aVL, V1~4のST上昇の和 (ΣST {I・aVL} , ΣST {V1~4} ) は有意に大であり, 再疎通後にはΣST {I・aVL} , ΣST {V1~4} の減少とともに下壁誘導ST低下も軽減し, reciprocal changeと考えられた.とりわけI・aVLのST上昇と下壁誘導ST低下には強い相関がみられた.ST非低下群ではΣST {I・aVL} , ΣST {V1~4} が小さく, reciprocal changeが小さいと考えられた.しかし, 左前下行枝がapexを越えて下壁の一部を灌流する症例はST非低下群に多く (6/9例) , うち3例で下壁誘導STは上昇を示し, 下壁誘導のSTが低下を示さなかった要因として, 下壁梗塞の合併によるreciprocal changeの相殺も考えられた.

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© 一般社団法人日本不整脈心電学会
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