1986 年 6 巻 3 号 p. 247-252
高齢者におけるPropranolol (以下PL) の心拍数抑制効果について, 血中PL濃度測定とホルター心電図による心拍数測定により検討した.1) 20mg服用後の最高血中PL濃度および濃度時間曲線下面積は, 高齢者65.4ng/ml, 320.15ng・hr/ml, 若年者18.4ng/ml, 57.18ng・hr/mlと高齢者が若年者に比し有意に高かった.2) 高齢PL服用者の心拍数は, 高齢健常者に比し, 昼夜とも最高, 平均および最低心拍数が有意に低く, またPL中止群に比し, 夜間の最高心拍数および昼間の最高, 平均, 最低心拍数が有意に低かった.3) PLによる心拍抑制は, 交感神経が優位の活動時間帯に著明であり, その主作用は交感神経遮断によるもので, 洞機能に対する直接作用は少ないものと考えられた.また, 血中PL濃度と心拍数抑制の関係は認められなかった.4) PLは高齢者においても, 血中濃度がかなり高くなるにもかかわらず, 安全に使用できる薬剤であると考えられた.