安静心電図における非特異的T波および健常男性の生理的負荷における陰性T波の出現頻度, ホルター心電図によるT波高日内変動, および急性心筋梗塞における陰性T波の形成速度の臨床的意義などについての検討を行ない, 日常臨床におけるT波測定の有用性を検討した. (1) 成人男性では, 1次性, 2次性陰性T波を除いた安静心電図での左側胸部誘導陰性T波の存在や生理的負荷によるT波陰転化は, 病的要因による可能性が示唆された. (2) ホルター心電図CM5誘導におけるT波高変動は, 生理的には心拍数との相関を認めるが, 重症3枝病変心筋梗塞では心拍数との関連を認めず, 生理的変動を上回る病的要因によると考えられた. (3) 急性心筋梗塞における陰性T波の早期出現は, 梗塞部の再灌流を示唆し, 心筋梗塞急性期の管理に有用であった.以上のごとくT波の変動は臨床において病態評価に役立てることが可能であると考えられた.