表面科学
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電子プローブ微小分析法
副島 啓義
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1989 年 10 巻 10 号 p. 710-717

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抄録

EPMAの概要と発展の歴史および今後の見通しについて述べた。特に組成分析の能力, 薄膜の分析能力, 表面微小部の分析能力については考察も行なった。
分析感度を最も左右する分光器の回折強度は年代とともにほぼ直線的に向上しており, 重元素・軽元素は10年で約5倍に, 超軽元素は10年で約10倍になっている。いずれもまだ限界には達していない。これにより多くの元素の検出限界濃度は毎秒あたり10ppm程度になっており, 1ppm以下の元素もある。全く未知な微小領域の全元素対象の定性分析はベテランオペレーターに依るところが多かったが, 高速自動分析・判定が可能になった。サブミクロン以下の薄層の定量分析法は理論的にもバルクの場合と異なるが, モンテカルロ法による定量法が発達してきている。表面100Å・10Åの層は通常はEPMAの分析対象とはされていないが, 高性能な装置では10Å層の数%の重元素・軽元素の検出が可能である。ただし下地との区別には問題がある。薄膜中あるいは最表面の微粒子に対する空間分解能はバルクとは異なり, 特に横方向の分解能は最終的には入射電子線径まで向上する.
EPMAは装置も分析技術も完成度は高いが引き続き進歩している。装置の普及が進むにつれ, 分析技術の普及・伝承も重要な時期にきている。

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