表面科学
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固液界面における潤滑油の挙動
川村 益彦
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1989 年 10 巻 10 号 p. 738-743

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抄録

潤滑油は機械装置の動く部分に作用して摩擦や摩耗を制御する働きをする。滑りあう二つの固体表面間が潤滑油の流体膜で分離されている流体潤滑領域では, 摩擦, 摩耗共に極めて少ない。潤滑条件が厳しくなると油膜厚さが小さくなり, 固体表面が油膜を介して弾性変形しつつ潤滑される弾性流体潤滑となる。これら二つの潤滑機構については流体力学及び固体の弾性理論によってほぼ解明されている。さらに厳しい潤滑条件では固体間はもはや流体膜のみでは分離できなくなり, 表面の一部が直接接触する境界潤滑となる。この領域で摩擦, 摩耗を制御するために各種の添加剤が用いられている。
添加剤には, 表面に吸着して潤滑性を持つ皮膜を形成する油性剤や, 油膜が破断した際に発生する摩擦熱により表面と反応して強固な潤滑膜を形成する極圧剤がある。
これら添加剤の作用機構について検討した例を紹介した。添加剤が作用する場所は二つの固体表面に囲まれ, しかも互いに運動している界面である。したがって, 潤滑中の添加剤の挙動を直接観察することは出来ない。ここに潤滑研究を行なう上での難しさと問題点がある。

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