1989 年 10 巻 10 号 p. 790-798
III-V族化合物半導体の成長を念頭におき, MBE法MOCVD法の, この10年間におけるきわめて広範な発展の中で, 特に表面物理化学に密接に関係し, かつ近年の進展が著しい原子層制御成長技術に焦点を合わせ, その概略を述べる。この技術は, 単原子層の厚さの精度で成長層厚を制御し, かつ原子レベルで平坦な成長面, ヘテロ接合界面を得ることを目標としており, エピタキシャル成長法としては究極の技術と言える。その代表例として, 成長中断法, ALE法, MEE法等について, 成長プロセスの観察法も含めやや詳細に述べる。これらの方法のもう一つの特徴は, 従来の化合物半導体のエピタキシャル成長プロセスが, それぞれ素過程に分解されていることである。このため, これらの方法は各種エピタキシャル成長法における成長機構を解明する上でも大いに役立っている。本文ではこれまでの成長機構に関する理解の進展をまじえながら解説する。