表面科学
Online ISSN : 1881-4743
Print ISSN : 0388-5321
ISSN-L : 0388-5321
生体機能膜
相澤 益男
著者情報
ジャーナル フリー

1989 年 10 巻 10 号 p. 811-817

詳細
抄録

生体膜の分子情報変換メカニズムとその分子構築が次々と解明されるようになった。とくに, ホルモンおよび神経トランスミッターのレセプターにおける, 情報分子の認識と, 化学増幅の機構が明確となってきた。これら分子情報変換メカニズムをモデルとして, シナプス前膜機能を代行し, 電気刺激によって神経トランスミッターを放出する人工膜デバイスがつくられた。さらに分子認識機能を有する人工膜が, 酵素, 抗体あるいはレセプターを利用してつくられるようになり, これらの分子認識膜は酵素センサー, 免疫センサー, レセプターセンサーなどに応用された。
生体膜の輸送機能には種々の制御機構があり, フィードバックループが形成されているが, 導電性高分子薄膜の特性を利用して, アミノ酸の透過を電位制御できることが示された。また導電性高分子薄膜に酸化還元酵素を包括した導電性酵素膜が創製され, 酵素活性を電位制御できることが明らかとなった。生体膜機能の電位制御は細胞の機能制御にも及び, 細胞の増殖速度が電位制御可能であることも示された。

著者関連情報
© 社団法人 日本表面科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top