表面科学
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超伝導体内部界面の原子構造
石田 洋一高橋 裕
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1989 年 10 巻 10 号 p. 856-862

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抄録

高温超伝導酸化物YBa2Cu3O7-xとBi2Sr2CaCu2Oxの結晶粒界の高分解能電子顕微鏡による組織学的解析と双結晶を用いた直流伝導測定の結果を比較し, 内部界面の原子構造と電気伝導特性の関連について考察した。
透過電顕観察は, YBa2Cu3O7-x, Bi2Sr2CaCu2Oxなどの層状構造を特徴とするこれらの超伝導酸化物の焼結体が一方の結晶の底面に平行な, いわゆる底面粒界を多く含むことを示し, 超伝導性は特にこの結晶粒界で弱いことが予想された。
しかしながら [001] ねじり粒界を持つBi2Sr2CaCu2Ox双結晶における超伝導性の測定は, 単結晶と比較して, その臨界温度および臨界電流とも大差ないことを示した。この結果はDimosらが行ったYBa2Cu3O7-xの [001] 対称傾角双結晶の結果と矛盾する。
これらの差異について議論を行い,
1) YBa2Cu3O7-xとBi2Sr2CaCu2Oxの結晶構造の差
2) 作製したBi2Sr2CaCu2Ox双結晶の粒界微細構造の影響の可能性を指摘した。そして, 今後この種の双結晶実験を精力的に行い, 単一の粒界の電気伝導特性と微細構造を対比することが酸化物超伝導体の粒界研究に必要であることを強調した。

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