表面科学
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超伝導体表面・界面の電子状態
高橋 隆松山 博圭
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1989 年 10 巻 10 号 p. 863-870

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抄録

高温超伝導体の電子構造を光電子分光, 逆光電子分光および軟X線吸収分光法を用いて研究した結果について説明する。Bi系高温超伝導体単結晶についての角度分解光電子分光から, フェルミ準位を切る分散的バンドが見いだされ, 高温超伝導体にフェルミ面およびフェルミ液体状態が存在することが確立された。このことは, 高温超伝導発現機構が従来のBCS的機構の範囲内で理解できることを示す。また, 逆光電子スペクトルには, 明確なフェルミ端が見いだされ, 上記の結果を支持している。軟X線分光の結果は, フェルミ液体状態が主にO2px, y軌道からできていることを示している。光電子スペクトルの温度依存性の測定から, LaおよびY系の高温超伝導体では, 真空中においてその表面から酸素の脱離が起き, 表面が半導体化することが見いだされた。この表面変質は, 試料を低温に保つことで抑制される。一方, Bi系は真空下においても安定である。高温超伝導体とFe, Mg, Pbの界面では, 酸素が金属側に引き抜かれ超伝導性が失われているのに対し, Ag, Auとの界面は安定であることが見いだされた。

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© 社団法人 日本表面科学会
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